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東京地方裁判所 昭和23年(行)62号 決定 1948年11月13日

原告

山中シナ

被告

被告

上田市上田地区農地委員会

被告

長野縣農地委員会

主文

本件を長野地方裁判所に移送する。

理由

被告等各指定代理人は主文同旨の決定を求める旨申立て、その申立事由の要旨は、本訴に於て、原告は、被告長野縣農地委員会のなした原告の訴願棄却の裁決の取消を求めているが、右請求は、行政事件訴訟特例法第四條により、被告長野縣農地委員会の所在地の裁判所たる長野地方裁判所が專属管轄を有することになるから、同裁判所へ移送さるべき関係にあり、爾余の請求は原告の被告長野縣農地委員会に対する右訴と関連請求に係るから、右訴と共に審理されるのが、著しき損害又は遅滞を避けるため必要であるから、右関連請求は、これを長野地方裁判所に移送せられんことを求めると謂うにある。仍て按ずるに、本訴はその請求趣旨として「被告等は、上田市大字常入字年々田二百八十一番ノ一田一反二畝二十九歩が原告の所有なることを確認すること。被告上田市上田地区農地委員会が昭和二十二年十月二十一日附東京都板橋区農地委員会を経て通知し來れる右土地につき定めた農地買收計画を取消すこと。被告長野縣農地委員会が昭和二十三年七月十六日附を以てなした右土地の買收計画に対する原告の訴願についての裁決を取消すこと。訴訟費用は被告等の負担とする」との判決を求め、その請求原因の要旨は、被告上田市上田地区農地委員会は原告所有の上田市大字常入字年々田二百八十一地ノ一田一反二畝二十九歩につき、自作農創設特別措置法に基き買收計画(以下本件買收計画と略称する)を定め、昭和二十二年十月二十一日東京都板橋区農地委員会を経て、これが買收をなす旨通知して來たので、原告は、同月二十八日被告上田地区農地委員会に対して異議の申立をしたが、同委員会は、右異議の申立を却下したので、原告は、被告長野縣農地委員会に対して訴願をしたところ、同委員会は昭和二十三年七月十六日附を以て同年八月四日右訴願棄却の裁決をした。而して、本件買收計画は次の理由で違法である。即ち、原告は、昭和二十年十一月二十日より訴外浦田富治郞を雇入れ、その所有に係る本件士地を耕作せしめて來たものであつて、小作地ではないのみならず、原告は昭和十九年十二月三十日より昭和二十一年三月二日迄上田市常入金山町百七十八番地中田仙次郞方に同居し、主食その他の配給を受けており、從つて、自作農創設特別措置法による農地買收計画樹立の標準日時たる昭和二十年十一月二十三日及びその前後において、本件土地所在地である上田市に住居を有していたものであるから不在地主でないこと明かである。右の如く原告は不在地主でなく且本件土地を自ら耕作しているのであるから、被告上田地区農地委員会が自作農創設特別措置法に基き定めた本件買收計画は違法であり、かゝる違法な行政処分により原告の本件土地所有権を侵害せんとするのであるから、原告は、被告等に対して、右所有権の確認を求める。又、前記の如く被告上田市上田地区農地委員会の定めた本件買收計画は違法であるからその取消を求める。更に、被告長野縣農地委員会が本件買收計画に対する原告の訴願につきこれを棄却する旨の裁決をなしたのは前記理由により違法であるからその取消を求める。仍て本件請求に及んだと謂うにあつて、更に右被告上田市上田地区農地委員会に対する本件買收計画の取消を求める訴についてはその請求趣旨を「被告國及び被告上田市上田地区農地委員会は、同農地委員会が定めた本件買收計画を取消したことを確認すること」と変更しその請求原因につき「被告上田地区農地委員会は、本件買收計画を定めた後昭和二十三年八月十七日附を以て本件土地につき再度買收計画を定めたのであつて、本件買收計画は、新しい右買收計画によつて取消されたものであるから、本件買收計画の取消の確認を求めるため右請求に及ぶ」旨補充すると謂うのである。果して然らば、本件において、原告の、被告長野縣農地委員会が昭和二十三年七月十六日附を以てなした原告の訴願棄却の裁決の取消を求める訴は、行政事件訴訟特例法第二條の「行政廳の違法な処分の取消を求める訴」に該当することは明かであるから、同法第四條により被告農地委員会の所在地の裁判所たる長野地方裁判所の專属管轄であつて、当裁判所の管轄に属しない。又その余の訴については、原告の被告長野縣農地委員会に対する右取消を求める訴と関連請求に係るものとして一の訴を以て提起されたものと解すべきものであつて、被告國に対する訴を除く他の訴が長野地方裁判所の管轄に属する以上、同裁判所は被告國に対する訴についても管轄権を有するものと解すべきであり、而も右被告長野縣農地委員会に対する訴を除くその余の訴も同裁判所において併合して審理するのが審理の重複、裁判の矛盾牴触を防ぎ、事案の解決につき著しき損害又は遅滯を避ける所以であるから、右被告長野縣農地委員会に対する訴と併せてこれを長野地方裁判所に移送するを相当と認める。仍て、被告長野縣農地委員会に対する訴については、民事訴訟法第三十條に則り、又その余の訴については、被告等の申立により、同法第三十一條に則り主文の通り決定する。

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